8月もいよいよ終わりだ。
夏休みの宿題に追われていたのは昔のことだが、今も
片付かないものに追われて夏を過ごすのは変わらない。
具体的には『ファイアーエムブレムif』と『スーパーロボット大戦BX』が終わらない。
今回は両タイトルに共通するキーワード、シミュレーションRPGについて
思うことを書いてみよう。
●シミュレーションゲームとは何か
シミュレーションRPG(SRPG)といえば、ビデオゲームのいちジャンルである
戦略シミュレーションゲーム(SLG)の一種だ。
自軍と敵軍が存在し、自軍の行動を選択して敵軍より優位に立てるよう立ち回り、
そのマップの勝利条件を満たすことで勝利する… 基本的な共通点はそんなところだろうか。
ビデオゲームの中でもテーブルゲームのチェスや将棋に近い性質のもの… というより
チェスや将棋自体が一種のシミュレーションゲームだといえると思う。
●では、シミュレーションRPGとは何か
シミュレーションとRPG、ふたつの異なるジャンルが足された言葉、これは一体なんだろうか。
RPGとはロールプレイングゲームの略で、プレイヤーが与えられた役を演じる「ごっこ遊び」
を発展させたものだ。
だから、私たちがよくRPGから連想するレベルアップや装備といったお馴染みの要素は、
RPGをRPGたらしめる必須要素というわけでもない。
ところが、シミュレーションRPGはそういうわけでもないようだ。
私は、シミュレーションRPGとは「なんかRPGっぽいシミュレーションゲーム」ではないかと
考えている。
●プレイヤーは何になるの?
最近のタイトルである『ファイアーエムブレムif』や『スーパーロボット大戦BX』には
主人公の分身となるキャラクターが存在する。主人公には好きな名前をつけることができる。
RPGのルールに従えば、おそらくこれが本来プレイヤーが演じるべきキャラクターなのだろう。
だが、これらのシリーズをさかのぼると、主人公やマイユニットといった要素が採用されたのは
シリーズを何作も経た後のことだ。
つまり、特にロールプレイの余地がなくてもシミュレーションRPGを名乗っている節がある。
●シミュレーションRPGはあくまで売り文句?
言葉の定義をがちがちに固めて文句を言ったってしょうがない。これはおそらくファジーなものだ…
それでもなにかしら、ふたつの言葉を足し合わせることにより生まれるメッセージは存在するはず。
こんな場合は、言葉の定義よりも印象が答えを教えてくれる。
RPGと聞いて連想する(ロールプレイ以外の)ものは
HP、MP、EXP、レベル、装備、剣、魔法、勇者、ジョブ、西洋風の世界、モンスター、
魔王、冒険、パーティ、世界を救う…… こんなところだろうか。
RPGの代表作にイメージを引きずられていることがわかる。
かつて大人気だったRPGの(ような)要素を取り入れて、お客さん来てくださいよ…という
この姿勢、現代でもスマホ向けアプリでもよく見かけるやり方だ。 実際有効なのだろう。
●なぜ国内でシミュレーションよりもシミュレーションRPGが人気なのか?
『信長の野望』や『ファミコンウォーズ』などと比べると、『ファイアーエムブレム』、
『スーパーロボット大戦』、『タクティクスオウガ』、『サモンナイト』、『魔界戦記ディスガイア』
などの方が売り上げやファンの規模が大きい。
これは日本のゲームファンの多くが、ゲームにRPGっぽいものを求めているということでは
ないだろうか。
●シミュレーションRPGだけが得意とするもの
シミュレーションRPGは、RPGにも、シンプルなシミュレーションゲームにもできないことが
できる。それは個性的なキャラクターたちの大規模な共闘だ。
プレイヤーの管理する集団をRPGのパーティからより大きな規模の部隊としたことで、長編
ストーリーの登場人物を増やすことに成功している。これは漫画やアニメの世界観を持って
くるのにより都合がいい。
多くのキャラクターを出せるということは、それだけ個性的なキャラクターを登場させやすく、
結果としてプレイヤーの琴線に触れるキャラクターとめぐり合える機会も増えるかもしれない。
気に入ったキャラクターを自分なりに贔屓し、カスタマイズし、活躍させられる。
キャラクター同士の掛け合いも見られる。
●かけ合わせに強いジャンル
こういった強みを活かした例が『スーパーロボット大戦』や『Project X Zone』などの版権クロス
オーバータイトルだと思う。
ゲームとしての純粋な楽しさ以外にも、キャラクターの魅力を活かす方向に労力を割く、という
ことも大切だと感じさせられる。
●ゲームテンポは適切か?
……ところで、これらのゲームは長編になりがちだ。多くのキャラクターを出し、それぞれを濃密に
描こうとすれば、それだけ広い空間と多くの敵、長いストーリーが必要になる。
長く遊べることは嬉しいことでもあるが、同じ事を繰り返すようなレベルデザインは退屈だ。
このあたりのさじ加減をうまくやらないと、ゲームとしての純粋な楽しさが失われてしまう。
シミュレーションRPGは諸刃の剣のようなものなのかもしれない。