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Wii U/ニンテンドーSwitch専用ソフト"ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド"。
本作の評判がとても良好であることはすでに知られていると思うが、そろそろ感想を
自分の切り口で書いてみよう。

●アクションについて
今回のアクションで印象的なものは「パラセール」による滑空と「ガケのぼり」だろう。

据え置き向け前作"ゼルダの伝説 スカイウォードソード"で すでに「がんばりゲージ」が
導入されて、ちょっとくらいの壁や急斜なら登れるようになっていた。
2010年前後からのアクションゲームのトレンドとして、複雑・広大化するゲームのマップ構造に
対して、プレイヤーの意を汲んで気持ちよく動き回れるよう、パルクール(障害物競技)要素を
採用する傾向はよく見られたのだが、今回はそれがさらに推し進められている。
結果として、ゼルダはアクションゲームとして見ても遅れず、前に進んでいる。

ガケが、よほどのねずみ返し的な構造でなければ頑張りながら登ることができる。
そして、高いところに登ったら気持ちよく降りたいという欲求をパラセールは満たしてくれる。
滑空は特に新しさも難しさもないアクションではあるが、このゲームのマップとよく噛み合っている。

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●密度について
当初、ゼルダの伝説がオープンワールド化すると聞いて、真っ先に浮かんだ懸念が「密度」だ。

前々作"ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス"で、開発者がインタビューで認めるような
反省点に「シリーズのマンネリ化」と「密度」の問題があった。

密度の問題とは、マップ中に敵も、仕掛けも、アイテムも、工夫や発見、感動もない、ただ広さを
実現するためだけの冗長な空間が多かったということだ。

これに対し前作"スカイウォードソード"では両方の問題と向き合って、明確に
フォトリアル路線ではないグラフィックや攻略や仕様に関する「お約束」の見直し、広さより密度を
重要視したマップ構造に取り組んでいる。

この流れを知る以上、"トワイライトプリンセス"と比べ物にならない広いマップを表現したら
また密度が疎かになってしまうのではないか(それも今まで以上に!)と想像するのが自然だろう。
・・・・・・しかしそうはならなかった。
今回のゼルダにはエレメントがあった。壊れる武器があった。移り変わる天候と物理エンジンが
あらゆる地形に自然な意味を持たせ、調達と消費のサイクルを早いものにしてプレイヤーを新しい
シチュエーションと目的に駆り立てた。
今作を歴史的な名作たらしめているところはこのアプローチだと感じている。

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●現実の法則に全てをゆだねず、あくまでゲームを作る姿勢
先に物理エンジンについて触れたが、ゲームの動き全てを汎用の物理エンジンによって計算すると
ゲーム的な都合のいい判定にならないことが多い。
マグネキャッチで鉄製のものを動かして隙間にはめたり、置いたタルをまっすぐ立てたりといったことは
あくまでゲームとして気持ちよく行えなくてはならない。

バーチャルリアリティ実現のために、リアルタイムCG技術を統合されたフォーマットのもとで皆が
学術研究し精度や再現性を追求するのが、近年のゲーム開発の主流だが、ゼルダと任天堂は明らかに
違う方向へ舵を切っている。 理想とするフィクションの形が違うということだ。

ゼルダの世界では金属に優先して雷が落ちるし、薪をいくつか集めて火をつければプレイヤーが
舞い上がれるほどの上昇気流が発生する。 そんなバカな! だが、それがいい。それが楽しい。
そこには日本のゲーム少年の誰しもが読んだことのあるような、マンガのトンデモ理論のような
心地よさがある。

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ゲームがHD世代への移行してから十余年。海外ゲームジャンルのマンネリ化を感じつつあった昨今、
日本のゲームがもたらす独特なセンスへの評価は見直されつつある。
その中でも"ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド"は日本のゲームが歩むべき方向へ光を灯して
くれたように感じている。
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