長年の黒字経営から一転、3DSの値下げ以後赤字傾向が続いている任天堂。
最近は報道も加熱しているが、不振の原因については諸説あってどうもひとつにはまとまらない。
今回は30日に公開された資料にて言及された戦略もあわせてその今後を探っていく。
※あくまでいち個人の意見に過ぎない点に注意!

●3DSについて
・最初の価格設定(25,000円)に問題あり
・ソフトの準備がWii Uと同時進行だったためハード立ち上げ期に長期間
 遊べるタイトルが不足していた
・海外では文化的な違いもあり、すれちがい通信が功を奏さなかった

●Wii Uについて
・従来の製品に比べ価格帯が高め
・HD環境になったため開発規模が大きくなり完成までの時間もかかる。
・PS3やXbox360と比べても高性能とは言いがたく、設計バランスも異なる
 後発で他HD機に対するアドバンテージがほとんどない
 このため海外ソフトハウスのローンチタイトルの評価が振るわず
 サポートを打ち切られるような状況になってしまっている

●30日に発表されたWii Uの施策について
30日公開の資料では、主にGamePadの魅力を伝えることを課題としていた。

・GamePadを活かしたタイトルの内部研究およびリリース
・DSのバーチャルコンソール配信開始

ここで、なぜDSのバーチャルコンソールが選ばれたのか深読みしておく。
・N64などのタイトルを再配信しても再度お金を払って購入してもらえるか不透明
・GCの配信をした場合、1タイトルの容量が1ギガバイトを超えるため利用者が減少する
・DSの場合は容量256メガバイト未満のタイトルが多く配信に向いている
・DSは純粋にタイトル数や参入会社が多い

以上のことからダウンロード販売の市場規模と収益性が絡んでいるのではないだろうか。
GamePadを活かすタイトルについては半信半疑で見守っていくしかない。
ハードの機能はロマンか利便性があれば受け容れられると思うが…

●QOL~Quality of Life~に関する新事業展開について、まとめと推測
QOL戦略に関しては、ぶっちゃけ任天堂の考えるエンターテイメントには含まれるが
ビデオゲームファンが今まで遊んできたゲームの話からは外れてしまうものだ。

詳しくは任天堂の資料を見てもらうしかないが、資料文中からおおよそのまとめと予想を
述べておく。

・『エンターテイメント』の定義を『QOL』(生活の質を向上させる分野)まで拡大解釈する
 『脳トレ』や『Wii Fit』のような健康に関わるテーマ
 『えいご漬け』や『絵心教室』のような学習に関わるテーマ
 『お料理ナビ』のような生活に関わるテーマなど

・上記のうち、まずは健康を第一弾として展開していく。事業領域とするのは
 未病のみなさんに健康をモニタリングし、適切なご提案をできるか、というもの
→ 計画中の商品はWiiFit的な"計測"と"トレーニング的な遊び"を備えたものだということ

・提供するプラットフォームはノン・ウェアラブルである
→ 計画中の商品は装着や持ち運びでない(スマートフォンやFitメーター的でない)ということ

・お客様とのつながりは、今後ニンテンドーネットワークIDで一元管理していく
→ 計画中の商品はネットに繋がる、あるいは少なくとも無線通信機能を有する
  さらに言えば、タッチパネルやボタン操作のどちらかが採用されるのでは

●外注からわかること

The Wonderful 101 (プラチナゲームズ)
Wii Sports Club (バンダイナムコゲームズ)
マリオ&ソニック ATソチオリンピック (セガ)
ファミコンリミックス (インディーズゼロ)
Dr. LUIGI & 細菌撲滅 (ARIKA?)
ドンキーコング トロピカルフリーズ (Retro Studios?)
毛糸のヨッシー(グッド・フィール?)
大乱闘スマッシュブラザーズ for 3DS/Wii U (バンダイナムコゲームズ)
ゼルダ無双 (コーエーテクモゲームズ)
真・女神転生×ファイアーエムブレム(仮題) (アトラス?)
モノリスソフト新作 (モノリスソフト)
ベヨネッタ2 (プラチナゲームズ/セガ)

ルイージマンション2 (Next Level Games)
マリオ&ルイージRPG (アルファドリーム)
大合奏! バンドブラザーズP(インテリジェントシステムズ)
星のカービィ トリプルデラックス(HAL研究所)

上のタイトルは最近発売、発表された任天堂の外注作だと思われるものだ。
こうやって見てみるとデベロッパ(開発)、パブリッシャ(販売)の関係に分かれて
作られているタイトルはとても多い。 ここからわかることもある。

・他社ハードでの開発実績を持つ企業に委託すればマルチプラットフォーム展開は
 (任天堂が他社ハードの技術対応に遅れていても)可能である

・『ゼルダ無双』などのタイトルが作られなくても他のタイトルが増えるというわけでもない
・任天堂が"QOL向上プラットフォーム"の展開を行っても外注タイトルの開発人員が
 とられるような状況は起こりにくい

●今後を見ていく
3DSはサードパーティのサポートを受けられるため任天堂が積極的に
タイトルを展開しなくてもソフト不足にはならないだろう。海外での普及は
やや鈍いが、マジコン利用者が跳梁跋扈していたDS時代に次ぐ普及ペースだと
考えばましな状況といえるかもしれない。

それに比べるとWii Uのタイトル不足は深刻だ。
任天堂製タイトルは供給されるだろうが、一度離れたソフトハウスをもう一度
連れてくるのは難しい。
(つけ加えると北米の企業は日本に比べて撤退など手を引く判断が迅速だ)
これを改善、あるいは解決していくためにはいくつかの道がある。

・外注タイトルの増加
・ゲームキューブやWiiの名作をHDリメイク、あるいは3DSタイトルのHD版を提供
・性能の影響を受けにくいインディータイトルの支援
・スマートフォン向けの開発互換性を強化し、アプリや他社の基本無料サービスを展開

これらの手段は少しづつではあるが実際にとられている。
任天堂のゲームと一言にいっても、マリオやゼルダの本編以外は外部の会社との協業に
よって提供されているものが多い。 その会社の多くは日本のソフトハウスだ。

限界はあるだろうが、今後も現実的なやりくりによって任天堂の経営は続けられていくと思う。
冬のゲーム機不振話としてはセガのドリームキャスト撤退を思い出す。
ゲーム機事業を撤退するということは、単純に他社のハードにゲームが供給されるように
なるというわけではなく、ハードを支えるために作られていた中堅ソフトが減少したり、
人材が離れていったりと差し引きではつまらなくなっていくという印象を持っている。

ファースト各社とも撤退だの事業売却だのというよろしくない噂は常に付きまとって
いるようだが、娯楽を供給する土壌を何とか維持していってもらいたいものだ。