さる 2011年9月4日、日本SF大会 ドンブラコン・エルにて
サイバーコネクトツー 松山洋氏によるソラトロボ講演
『ソラトロボ 空想科学世界の創造と未来』に聴衆として参加してきました。
今回はこの講演の概要をまとめています。

○注意点
文書内容はメモからの引用なので箇条書きかつ受け手の主体で書かれています。
松山氏の言い回しや単語表現自体がほとんど異なっています。
講演で大体こんな感じのことを言っていたよ、という参考程度にご覧ください。

(真摯なファンの方々には既出と感じる情報も述べられていると思いますが
この点についてもご了承ください)

13:30~15:05辺りまで、200ページに及ぶスライドショーによる
やや駆け足の紹介が行われました。

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1 ソラトロボについて
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構想10年、製作3年
DS用タイトルは、氏が知る限り、早いものでは3~4ヶ月で発売される
タイトルもある中(脳トレ系ソフトがあふれかえっていた)、
『ソラトロボ』は3年をかけて製作された大作。細く長くの3年

1998年から構想、2008年から開発
前作『テイルコンチェルト』は約10人による約1年での開発

1年かけTVアニメ2クール相当の資料を作成(3人で作成。のべ1000点以上)

この資料をプレゼンへ持ち込んだ。
世界観にこだわったものであること、そして熱意をアピール

・夢、SF、本物(正統派のしっかりとしたゲームだということだろう)


○3大コンセプト
・3Dアクション … ロボ・ヒトのダブルアクション
・壮大な世界 … ドラマ、緻密な設定
・高品質アニメーション … 1、2部専用OPアニメーション


企画・製作:サイバーコネクトツー、
アニメーション製作:マッドハウス、
キャラクターデザイン:結城信輝
メカデザイン:谷口欣孝

メカの人はスーパーロボット大戦などのデザインも手がけており、
ゲーム用のグラフィックデザインも経験・精通している。

キャラクター納品まで24ヶ月、メカは12ヶ月
後半は本社に缶詰状態で製作

欧州では2011年7/11発売(Nintendo)
北米では2011年9月中の発売(XSEED Games)
ワールドワイドでの展開

バンダイナムコでは海外での受注を取る力が弱い。
そのため欧州ではNintendoのサポートを受けて発売
(発売:バンダイナムコ、販売:○○といった形式)
クオリティが高かったからこそ流通やNintendoのサポートを受けられた。

日本での販売数は約5万本。もっと売っていく

日本と異なり、海外のパッケージソフトは店頭へ同日に並ぶ訳ではない
3週間ずれることもある

XSEED Gamesは販売専門の会社
ヨーロッパではロボはNG。
ロボットというものは6歳~9歳のものという認識
このため、欧州パッケージではヒト推しのイラストを使用

北米からは、欧州の経緯を受け、こちらでも異なるパッケージイラストを
使いたいという要望があり、先方が自発的にラフのイラストを発掘し
リクエストしてきたものを新たにクリンナップした。
ドラマ性をイメージしたイラストが使用される

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2 世界観についての説明
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(今回のスライド説明が)世界観だけで150ページあるという発言
浮遊大陸ならではの文化

イヌヒト、ネコヒトの文化、対立
かつて人類が住んでいた地球の世界設定

キャラ・メカ 内部資料をお見せする

キャラクター紹介
レッド、ダハーカと順に紹介開始
資料の設定には公開レベルがあるそうで、

LV1 タイトル発表時の設定
LV2 発売までに順次明かしていく設定
LV3 実際にゲームをプレイしなければわからない設定
LV4 ゲームをクリアしないとわからない設定
LV5 いわゆる裏設定

このような分類になっているそうだ。
キャラクター資料にはモチーフとなった犬種の写真も併記されていた。

レッドの後はダハーカの全形態からセプテントリオンまで紹介、
キャラクター、その愛機、次のキャラクターといった風に説明。
非公開の設定については、その末尾に〔非公開〕と記載があった。

ベルーガについての説明は「ベジータ」
彼の愛機サラマンデルは排莢ギミックを踏まえたデザインに気をつけたとか

ラーレス、レムレスの全長は5km

ワッフル達ゲストキャラの説明についてはおおむねさらっと流していた。
まもるくんの出演は福岡つながり(CC2の地元との深い繋がりを感じた)。

資料:シップ 
シップは着陸しないので縦長のデザインをしている

資料:島のルール

資料:アイテムの設定 クリステル

資料:年表(裏設定)

資料:食事文化に注意した 肉牛はギウ

資料:鳥、虫、甲殻類は大きい
(太陽に近い環境では大きくなる、ということにした)

資料:イヌヒトの犬種と能力の設定
グラフに載っているオオカミ型のイヌヒトは滅んだ設定。
オオカミ型は魔力が高い(エスパータイプ)

イヌに比べ、ネコはさらに多様。
かなり個性が分かれていたようだ

資料:毛の生え方ルール 
資料:体格図

ライオン型など大きい体格の設定もあったが
メディア容量とメモリの関係で出せなかったとのこと

資料:フランスモチーフだから街の中はフランス語
スタードッグスカフェは英語(フランス国内でも英語表記はあるため)

資料:医療 法律

資料:ハンター
ハンター = 何でも屋

資料:病気の設定(どんな病気にかかるか)
倫理面の問題があり公開・掲載できなかった資料

資料:大陸間移動方法について

資料:宗教の違い
イヌヒトのアンジュ教のイメージはキリスト教。カトリック
ネコヒトはオシラサマ 踊りなどがありこちらの方が楽しそう、とも

資料:ファッションスタイル
着こなしについての説明も記載されている

資料:バルーンベスト
島から落ちないための一般装備。
これは先にMGSPWに同様のネタをやられてしまったので
ゲームで使われなかった

資料:人気アニメ スーパーにゃっ太について
スーパーにゃっ太はニポン国製の輸入アニメ。

資料:色覚について イヌヒトの色覚は人間とイヌの中間。
アニメであるスーパーにゃっ太は低彩度。ほぼモノクロアニメ

スーパーにゃっ太の資料はわりかし多めだった

資料:ロボの歴史

メモをとったのはごく一部。これらの資料説明を駆け足で進めていった。
(ナノマシン、呪術、電柱トイレや貨幣などついての資料等も確認している)

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3 今後の展開
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小説、ゲーム本編、一年後の世界を描いたラジオドラマなどを展開してきた。

サイトについて
バンダイナムコゲームズのグランドサイトと
サイバーコネクトツーのユーザーズサイトの相互リンク
どちらもCC2がサイト製作。

粘り強いCM展開。今年も新規CMを製作されるほど

TwitterやFacebookによるユーザーとのコミュニケーション
情熱的なマーケティング

4月にはソラトロボ博物館(震災のため、3月予定を延期した)も

グッズ展開
ファンブック等について
ゲーム本編での採用を潜り抜けたスタードッグスコーヒーも
さすがにマグカップのグッズはバンダイナムコから「(スタバから)訴えられたら
困る」と許可が出なかった

プレーリー王国はベルギー(ベルギーワッフル、から)
ニポン国は4分割されている。まもるくんは九州地方。四国はジゴク、といった発言も
シェパルドのロボは首のあるドラゴンヘッド
プレーリーのロボはフェイスレス
ニポン国にロボットはいない(ロボット技師がいない)。車は走っている


リトルテイルブロンクス構想の第4作『ストレルカストーリーズ』についても少し触れられた。

○スライドの中から読み取れたキーワード
クドリャフカ(人名) 社会主義連
人工のクリステル(チェルノブイリ?)
事故 テロ 処刑 ロケット ヲレスの死 宇宙


直接名言はされなかったが、資料から読み取る限り、今作の舞台はロシア方面で、
コスモナーフト(宇宙飛行士)に関わる物語となるようだ。
(『クドリャフカ』や『ストレルカ』という名前を知っている人なら安易に想像できる)

今回見せた資料は初期のものだそうなので、一体どこまで描くのか、
他の作品の影響を受け、今後どのくらい内容に変化が出るのか不明。

社会主義連、テロ、事故、処刑などといった単語が出てきたり、
資料を見る限りは明るい雰囲気がなく、死や社会問題など
やや高年齢層向けのシリアスなテーマが感じられた。
死を乗り越え、意思を継いでいく内容になると思われる。

今まで以上に現代社会との密接な関連性をおぼえる。

チェルノブイリをモチーフにしたメロウクリステルまわりなどは
今年の震災や原発の問題を連想させそうでもあり、使いづらいはずだろう。

『ストレルカストーリーズ』についてはハードやジャンルも依然伏せられたまま。
現在の印象ではストーリーのイメージは伝わるが、ゲームプレイのイメージは
全く見えてこない。もしかするとアニメライクなテキストアドベンチャーや
ビジュアルノベルのようなものになるのではないかという印象を抱いた。


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感想
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ソラトロボがバンダイナムコや任天堂に高いクオリティを認められていることは
しっかり伝わりました。
そして、国内では発売から一年近くが経ちますが、海外での展開や費用回収は
まだまだこれからだという意気も感じます。

また、1000点を超える大量の設定資料が企画を通す情熱を示したという
事例だという点も見逃せないファクターだと思います
(実際、これだけの資料を持ち込まれたら相当のインパクトがあるはずです)。

昨今の精力的な取り組みもあって、サイバーコネクトツーの存在感は
着実に増してきている印象です。

高いモチベーションをもって作られた、クオリティの高いゲームタイトルは
もっと評価されるべきではないでしょうか?

『ストレルカストーリーズ』や『アスラズ ラース』など、今後の
CC2製新作タイトルにも大いに期待したいですね。